不動産業者と話をしていると、「レインズ」という言葉が出てくることがあります。
レインズとは不動産業者が閲覧できる不動産情報サイトのことです。
全国4つの指定流通機構が運営しています。
このレインズ、一般の人は一部を除いて利用することはできません。
それなら「レインズは自分たちと関係ないのでは?」と考えてしまうかもしれません。
ところが、レインズは不動産取引でも重要な位置を占めているのです。
今回は、そんな知ってそうで知らない「レインズ」について調べてみました。
不動産の売買を行うときに「レインズ」の存在はかなり重要になってきます。
レインズの仕組みやメリット、不動産を売買する当事者になったときの活用法などをお伝えしていくので、ぜひ参考にしてみてください。
また、2021年は不動産価格が高止まりしており、高値で売却できる良い市況が続いています。
今のタイミングを狙って不動産を売却しようと考えている人も多いと思うのですが、売却時に絶対にやってはいけないことを知っていますか?
それは、「1~2社程度の不動産会社にだけ、査定を依頼すること」。
一般的な商品とは異なり、不動産には決まった価格がありません。査定を依頼した不動産会社によって500万円以上査定額が違うこともあります。
もしあなたが1~2社にだけ不動産査定を依頼して適正価格より低い査定額が提示された場合、本来売れるはずだった金額よりも数百万円安く売りに出してしまう可能性があります。
具体的な事例を挙げてみましょう。あなたが売却予定の不動産の本来の適正価格が「3,000万円」だったとします。
たまたま査定に出した2社の不動産会社の査定額が「2,700万円」と「2,650万円」だった場合、あなたはどう思うでしょう?
適正価格を知らないあなたは、
「なるほど。プロが言うのだから、2,700万円ほどが妥当なのだろう。」
と判断し、2,700万円前後で売りに出すでしょう。
本来であれば3,000万円でも売れた物件を、300万円も安い金額で手放してしまったわけです。高級な車が買えるほどの大金をドブに捨ててしまったわけですね。
「適正価格で売り出すことが大切なのはわかったけど、どうやって適正価格を調べることができるの?」
と疑問に思われますよね。不動産の適正価格を把握する方法は、ずばり「6社以上の不動産会社に査定を依頼すること」です。
1~2社では査定額が偏ってしまうリスクがありますが、6社以上に査定を依頼することで、査定額の偏りを避けて適正価格を把握しやすくなります。
昨今では、条件にあった不動産会社にまとめて見積もりを依頼できる「一括査定サイト」が増えていますが、中でもおすすめなのが大手が運営する下記の3サイトです。
東証一部上場企業「NTTデータグループ」が運営。全国で厳選された1,500社に査定を依頼できる。全国的に不動産会社と提携しているのでバランスがいい。 東急リバブル、住友不動産、三井のリハウス、小田急不動産、野村の仲介+、三菱地所ハウスネットなどの大手にまとめて査定を依頼できる唯一の一括査定サイト。都心部の不動産査定におすすめ。 JASDAQスタンダード市場上場の「Speee」が運営。チャット形式で査定を依頼できるため、操作方法がかんたんでわかりやすいのが特徴。地方の不動産会社とも豊富に提携している。 |
当サイトのイチオシは「HOME4U」ですが、HOME4Uだけに査定を依頼すると、査定可能な会社が数社しか出てこない場合があります。
そのため、
といったように、エリアごとに2つの一括査定を併用してみてください。2社を活用することで、確実に適正価格を把握することができますよ。
どの一括査定サイトも上場企業が運営しているため安心ですし、厳選された不動産会社のみと提携しているので悪徳業者に依頼してしまうリスクを回避できます。
査定を依頼したからといって無理な営業などもなく完全に無料で利用できるので、不動産売却で数百万円損しないためにも、ぜひ活用してみて下さい。
【本記事の監修者】 宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー 大学卒業後、東証一部上場大手保険代理店へ入社。その後、大手不動産ポータルサイト運営会社へ転職。ITベンチャー企業での経験を経て株式会社Azwayを創業。 「住まい」と「ライフスタイル」に特化したWEBサービスを手掛けている。
もくじ
レインズって何?
レインズは、不動産情報を閲覧、検索できるネットワークシステムです。
Real Estate Information Network Systemの略でREINS(レインズ)と呼ばれています。
国土交通大臣が指定した全国4つの不動産流通機構で運営されており、不動産売買などを行う際には物件がある地域のレインズに登録するようになっています。
- 東日本レインズ(不動産流通機構)
- 中部圏レインズ(不動産流通機構)
- 近畿圏レインズ(不動産流通機構)
- 西日本レインズ(不動産流通機構)
レインズには登録された不動産情報がまとめられていてい、加入している不動産業者が検索・閲覧できる仕組みです。
レインズでは何が見られる?
レインズでは市場に出ている物件情報を見ることができます。
買主や賃貸人を募集している、あらゆる不動産情報を網羅しています。
suumoやat homeなど一般の人でも見られるポータルサイトの掲載情報はもちろん、実際にいくらで売買されたのかという成約価格も見ることができるのが特徴です。
したがって、物件を売却しようとしたときにレインズで周辺の売買事例を参考にすることで適正な相場を探ることもできるのです。
ただし、レインズは世の中すべての不動産情報が掲載されているわけではありません。
これには不動産を売却しようとしたときに売主と不動産業者間で結ばれる「媒介契約」が関係してきます。
例えば、自宅を売却しようとしてある不動産業者に仲介依頼をしたとします。
そうすると売主はその不動産業者と「媒介契約」と呼ばれる契約を結ぶことになります。
媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類の形態があります。
このうち「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」では、物件情報をレインズに登録しなければいけない義務が不動産業者に発生します。
しかし「一般媒介契約」ではこの登録は義務付けられていません。
そのため、なかにはレインズに掲載されていない不動産もあるのです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
レインズへの登録義務 | 義務なし | 媒介契約締結から7日以内に登録義務 | 媒介契約締結から5日以内に登録義務 |
一般人は見られない?
レインズは不動産業者が見るためのシステムなので、一般の個人が見ることはできません。
ただし、不動産業者と媒介契約を結んだ売主に限っては物件の「取引情報」を見ることができます。
その際には、不動産業者から受け取る物件の登録証明書に記載されているIDとパスワードを使って確認します。
取引状況には「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つのステータスがあり、不動産業者が随時ステータスを更新していきます。
売主はこのステータスを確認することができます。
レインズに不動産を登録する3つのメリット
不動産業者に閲覧がほぼ限定されるレインズ。
一般の人にしてみると、内輪だけで情報をやりとりしていて胡散臭い印象を持たれることもあります。
ただ、レインズについては売主にもいくつものメリットがあるのです。
レインズに不動産を登録する売主のメリットは次の3点になります。
- 情報が多くの不動産業者に行き渡るのがメリット
- 早期に取引が成立する可能性がある
- 適正価格で取引が成立する可能性がある
さっそく各項目をみていきましょう。
1.情報が多くの不動産業者に行き渡るのがメリット
レインズに物件情報を登録すると、翌日、早ければ登録当日にも他の不動産業者からの問い合わせが入ります。
それだけレインズに注目している不動産業者が多いのです。
これは物件情報がスピーディーに拡散している証拠。
レインズに登録すれば、多くの不動産業者の目に止まるようになるのです。
2.早期に取引が成立する可能性がある
不動産業者は仲介手数料が主な収入源であるため、多くの取引をこなしたほうが収入は増えます。
このため、物件情報をいつも探しています。
レインズに物件情報を登録することは不動産業者への情報提供です。
情報を開示することで早期に取引が成立することもあります。
早く売れることは不動産業者だけでなく、売主の利益にもなるのです。
3.適正価格で取引が成立する可能性がある
レインズには成約価格も掲載されていることはお話ししました。
成約価格を元に査定をすれば、相場と大きくかけ離れることはありません。
不動産業者は早く取引を成立させるため、価格を必要以上に引き下げようとする業者もいます。
レインズの成約価格による査定を使うことによって、適正価格で取引が成立する可能性があるのです。
これは売主、買主双方にとってもメリットとなります。
レインズに不動産を登録する唯一のデメリット
多くの不動産業者が閲覧し、日々情報をチェックしているレインズ。
レインズに登録することは基本的にメリットの方が大きいですが、唯一といってもいいデメリットもあります。
- 周りに売り出し中であることがバレる可能性がある
レインズが広く不動産情報を知らしめるためのシステムであるが故、それを望まない人にとってはデメリットとなるのです。
周りに売り出し中であることがバレる可能性がある
レインズは不動産業者しか見ることができないため、一般の人に売り出し情報が公開されることはありません。
しかし不動産会社であれば見ることができるため、物件を探している一般の人が不動産会社を通して知る可能性もあるのです。
誰にも知られずに売却したいのであれば業者の買取を利用する方法もありますが、一般の市場で売却したいのであれば最低限レインズでの登録による情報の拡散は避けられない部分です。
不動産業者にとってもレインズ登録はメリットがある
レインズの情報を閲覧できるのは不動産業者に限られています。
そんなレインズがなぜ作られたのか、それは次のようなメリットがあるからです。
- 不動産情報の一元化
- 売り出し価格や成約価格の調査
- 媒介契約に基づく適正な取引に寄与
- 個人情報保護のため一般の人は閲覧不可
不動産会社にとってもメリットが多くあるのがレインズなのです。
一つずつ見ていきましょう。
1.不動産情報の一元化
情報は独り占めするもの。
不動産の世界では今でもこうした風潮があります。
レインズができる前はその傾向はさらに顕著でした。
これでは取引相手を探すことができず、売買自体が成立しません。
そこで不動産情報を一元化して管理するためにレインズは生まれました。
レインズによって情報が公開されることによって不動産の売買情報がオープンになり、売買が促進されるようになったのです。
2.売り出し価格や成約価格の調査
レインズには現在売り出し中の物件情報だけでなく、取引が成立した成約情報も掲載されています。
成約した情報は不動産の査定を行う際の参考資料となります。
売り出し価格が、周辺の過去の売買事例からかけ離れていれば適正相場とは言えずなかなか売れないでしょう。
それは不動産会社にとっても不利益になります。
物件の価格査定にも重要な役割を担っているのです。
3.媒介契約に基づく適正な取引に寄与
専属専任媒介契約や専任媒介契約では、不動産業者は媒介契約締結後一定期間内にレインズに登録することが義務付けられています。
一般の人はレインズを閲覧できないものの、例外的に売主は自分の物件に限りそのステータスを閲覧することが可能です。
これによって、売主は不動産業者がきちんと働いているかをチェックすることができるのです。
4.個人情報保護のため一般の人は閲覧不可
レインズは不動産の詳細な情報が掲載されています。
地番や面積まで掲載しないと詳しい情報が分からないからです。
仮にレインズが誰でも閲覧できるものだと、物件が売りに出されていることが周囲に広く知れ渡ってしまいます。
売主の中には、自分の家や所有地が売りに出されていることを知られたくない人もいるでしょう。
こうした売主の意向や個人情報保護の観点から一般の人は閲覧できないようになっているのです。
レインズに不動産を登録してもらう2つの方法
早期売却を希望するなら、多くの不動産業者に売り出し中の不動産であることを知ってもらうべきです。
レインズはこうした目的で創設されています。
このレインズに登録してもらうにはレインズ登録が義務付けられている契約形態にするか、不動産業者に依頼するかの2通りです。
- 専属専任、専任媒介契約を結ぶ
- 不動産業者に依頼する
それぞれ見ていきます。
1.専属専任、専任媒介契約を結ぶ
専属専任媒介契約の場合は契約締結後5日以内、専任媒介契約は7日以内にレインズに登録することが取り決められています。
これらの媒介契約を結べば自動的にレインズに登録されるのです。
また、登録期限前に不動産業者が買主を連れてくることもあります。
不動産業者もできれば自分で買主を見つけたいもの。
こうしたレインズへの登録が早期売却を促しているのです。
2.不動産業者に依頼する
一般媒介契約にはレインズへの登録は義務付けられてはいません。
このため、レインズには登録されていないものの、売り出し中の不動産であることは数多くあるものです。
不動産のポータルサイトはいくつもあるものの、レインズは不動産業者がよく閲覧するサイトになっています。
もし一般媒介契約でもレインズへ掲載を希望する場合には、不動産業者にその旨を依頼しましょう。
レインズの登録状況を確認して囲い込みを予防する
レインズでは物件情報を登録すると、不動産業者に対して「登録証明書」が発行されます。
売主は不動産業者から登録証明書を受け取ったら、さっそくレインズで登録状況を確認してみましょう。
登録状況を確認することは実際の登録状況を確認するとともに、囲い込みの抑止にもつながります。
不動産業界の悪しき習慣ともいわれる「囲い込み」というものをご存じですか?
知らないと、いつの間にか損をしていた!ということにもなりかねません。
囲い込みの実情と予防方法を見ていきましょう。
囲い込みとは何か
囲い込みとは、他の不動産業者に情報を流さないことです。
不動産業者は売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ることを目指すことがあります。
これが両手仲介です。
売主も買主も自分のところの会社を仲介会社として使ってくれれば、両者から仲介手数料をもらうことができるため一番利益が出るのです。
そのため両手仲介を狙って、売り出し中の不動産にもかかわらず商談中と称して他の不動産業者に情報を提供しないことがあります。
囲い込みは売主の利益にならないため禁止されている行為ですが、一部業者では今でも行われているのが現状です。
売主は登録証明書でレインズの登録状況を確認できる
レインズへ物件情報が登録完了後、登録証明書がレインズから不動産会社に発行されます。
不動産業者からこの証明書を受け取りましょう。
登録証明書には売主用のID、パスワードが記載されているので、これを使ってレインズにログインします。
自分が売却依頼した不動産のステータスを見ることができます。
ステータスは「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3パターンです。
申し込みがまだ入っていないにもかかわらず「書面による購入申込あり」や「売主都合で一時紹介停止中」になっている場合は、囲い込みされている可能性があるので要注意です。
不動産会社に状況の確認が必要です。
レインズの情報を一般人でも閲覧できる2つの方法
レインズは基本的に不動産業者しか閲覧することができません。
しかし、一方でレインズと同等に近い情報を一般の人でも見ることができるシステムがあります。
ここでは2つのシステムをご紹介します。
- REINS Market Information(レインズ・マーケット・インフォメーション)
- 不動産ジャパン
それぞれの特徴をご紹介します。
REINS Market Information(レインズ・マーケット・インフォメーション)
REINS Market Informationとは、レインズの膨大な情報を駆使したデータベースです。
価格水準や成約事例の情報が充実しています。
これらを活用することで自分の不動産がどれくらいの価格で売れそうなのか、いくらで売り出したらよいのかがわかるのです。
その掲載件数は2021年4月時点で11万件以上。
レインズは全国を網羅している指定流通機構が運営していることからその情報も全国から集められているのです。
誰でも利用できるREINS Market Informationは、特に以下の2点において活用できます。
1.価格水準をリサーチ
REINS Market Informationは主に価格水準データの提供を行なっています。
都道府県や市町村などを選ぶとその市町村で取引された不動産の一覧やグラフが表示されます。
そのグラフやデータも本格的で、不動産業者の査定書にも活用されています。
これも膨大なデータを有するレインズだからできることです。
2.流通市場の推移と動向がわかる
検索結果には、成約時期も掲載されています。
これを分析するといつ頃どれくらいの価格で売買されたのかが分かります。
検索も、市町村よりもさらに細かい地域まで選択することができます。
自分の不動産周辺での成約事例も調査可能です。
流通市場の推移と動向が簡単にわかりやすく調査できるのがREINS Market Informationの特徴といえます。
参考:不動産取引情報提供サイト(マンション・戸建住宅の売買価格・相場・取引事例の情報公開サイト)
不動産ジャパン
不動産ジャパンは、公益財団法人不動産流通推進センターが管理・運営している不動産情報サイトです。
下記の4つの団体からの情報をもとに掲載されています。
- ハトマークサイト
- FRKインターネット会員物件情報
- ラビーネット不動産
- 全国住宅産業協会
不動産ジャパンでもレインズとほぼ同じ物件情報を見ることができます。
ただし不動産ジャパンでは成約情報を見ることができないため、REINS Market Informationと併用しながら利用するのがおすすめです。
参考:安心・安全な不動産取引をサポートする総合情報サイト 【不動産ジャパン】
まとめ
不動産業者からレインズ、という言葉は聞いたことがあっても実際にどんなものなのか知らない人は多くいます。
レインズは一般の人が閲覧できないために不動産業者以外で知る人はそう多くないでしょう。
ただ、レインズは不動産取引を支える大切な裏方なのです。
レインズに直接アクセスできなくても、不動産業者を通じて利用することはできます。
また、充実したデータベースも利用可能です。
不動産取引の縁の下を支える、レインズを活用してみましょう。
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