住宅ローンの返済期間は最長35年。
その間には、ローンの返済が毎月休みなく続きます。
しかし住宅ローン以外にも、メンテナンス費用や火災保険料など住宅購入後には様々な費用がかかります。
その中のひとつが固定資産税の支払いです。
固定資産税は不動産を所有している間は毎年必ずかかる税金なので、合計すれば決して無視できないほど高額になります。
そのため、しっかりと内容を理解して対策を立てておく必要があります。
ところで一戸建て住宅の固定資産税とはいったいどの様な税金で、いくらくらいかかるのでしょうか?
またどうすれば固定資産税を節税することができるのでしょうか?
本記事では、固定資産税の計算方法や節税方法などを詳しくご紹介したいと思います。
もくじ
固定資産税とは?
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人全員に対して課税される地方税です。
固定資産税は、固定資産税評価額に1.4%の税率(1.4%は標準税率で、自治体によって異なる場合があります)を掛けて計算されます。
尚、固定資産税評価額は各市町村が決定した額で、販売価格とは異なります。
土地であれば時価の約70%が目安といわれますが、土地がある場所や面積、形状、接道状況などによっても評価額が変わります。
また建物の場合は、新築時では請負工事代金の約50~60%が目安といわれていますが、建物の構造や規模、築年数によって変わります。
そして土地の固定資産税はその土地の状態によっても変わります。
マイホーム、アパート、駐車場、空き地・・・など、その土地がどの様に使われているのかによって税額が異なるのが特徴です。
固定資産税は毎年変動する
固定資産税は、新築から3年間は120㎡までの家屋分に関して1/2まで減額されるという特例があります。
したがって特例期間が終わると固定資産税が増額します。
一方、建物は建築年数が経つごとにその価値が減少していくので、住宅を建てた年が最も評価額が高く、毎年評価額が減少していくごとに固定資産税も原則として安くなっていきます。
それに対して土地は建物の様に経年劣化することはなく、社会情勢や周辺地域の地価の変動によって値上がりすることもあります。
したがって固定資産税は下がることもあれば上がることもあります。
また固定資産税の計算のもとになる固定資産税評価額は、3年に一度見直しが行われます。
この見直しによって、固定資産税が変わることがあります。
この様に固定資産税は様々な要因によって毎年変動します。
固定資産税の支払い時期
固定資産税は市町村が課している地方税です。
そのため支払い時期は市町村により異なりますが、一般的には6月、9月、12月、2月の年4回に分けて支払うケースがほとんどです。
また第一期の納期限に全期分の税額(年税額)を一括して支払うことも可能ですが、一括払いを選択しても割引されることはありません。
毎年4~6月頃に郵送されてくる納税通知書に、税額や支払期限、支払い方法などが記載されているので、それらの案内に従って支払いを行います。
固定資産税の支払い方法
固定資産税の支払いは、納税通知書と共に送付されてくる振込用紙で銀行や郵便局、コンビニエンスストアなどで行います。

振込用紙での支払いのほか、多くの自治体では口座振替(自動引き落とし)にも対応しています。
また一部の自治体では、クレジットカードや電子マネー、ネットバンキングなどにも対応していますが、ポイントがたまる一方で手数料がかかることがあるので注意が必要です。
固定資産税の3つの特例措置
固定資産税には、新築の住宅取得者の初期負担を軽減するための特例措置が設けられているほか、中古住宅にも建築後の経過年数に応じた減価率が考慮されています。
ここでは固定資産税の3つの特例措置をご紹介します。
住宅用地の特例措置
一定の住宅用地(1月1日時点において、住宅がその上に建っている土地)については、課税標準が減額されます。
減額後の課税評価額は面積により下記の様に異なります。
・200㎡までの部分(小規模住宅用地)
税額=課税標準額×1/6×1.4%
・200㎡を超えた部分
税額=課税標準額×1/3×1.4%
すなわち土地に住宅が建っている場合には、200㎡までの部分については1/6に、200㎡を超える部分については1/3に固定資産税が減額されます。
新築住宅の特例措置
2020年3月31日までに新築された住宅の場合には、課税床面積が120㎡までの部分につき、一般の住宅では3年間、3階建て以上の耐火構造または準耐火構造の住宅では5年間にわたって固定資産税が1/2になる減税制度があります。
また、2020年3月31日までに新築された住宅が認定長期優良住宅の場合には、新築から5年間(マンション等は7年間)税額が1/2に減額される制度もあります。
中古住宅の特例措置
土地付きの中古住宅を購入する場合には、税額を1/2にする新築住宅の特例を利用することはできませんが、土地の課税標準額を1/6にする住宅用地の特例は利用可能です。
また建物が古くなれば当然価値が下がるので、固定資産税を算出する上ではその分を差し引きする必要があります。
その際に必要になるのが減価率です。
そこで中古住宅の場合には、建物の固定資産税評価額の算定に際して、「建築後の経過年数に応じた減価率」が考慮されます。
経年原価補正率は木造建物と非木造建物に対してそれぞれに設定されていて、東京法務局管内では木造建物が築27年以上で最小の0.2になり、非木造建物では築45年以上で最小の0.2になります。
築年数などによって算出された減価率を評価額に掛けたものがその建物の固定資産税評価額になります。
固定資産税は場所によって大きく異なる
固定資産税の税率は原則として全国一律ですが、その前提となる固定資産の評価額には大きな地域差があります。
特に土地の固定資産税は、主要な路線(道路)に面する標準的な宅地の土地評価額(路線価)に土地の面積を掛けて評価額を算定するため、路線価が高い場所と安い場所とでは大きな差が生じてしまいます。
したがって固定資産税には大きな地域差があり、都市部では高くなり地方では安くなります。
固定資産税の計算方法とは?
固定資産税の計算方法は
固定資産税額=「不動産の評価額(課税標準額)」×1.4%
となっていて、評価額に税率を掛けただけのシンプルな計算式になります。
固定資産税の評価額
固定資産税の評価額(課税標準額)とは、1月1日時点において固定資産課税台帳に登録されている価格のことで、住宅の場合は「土地」と「建物」に分けて計算されます。
土地の場合には、用途や立地等を加味して国が決定した「路線価」を元に、土地ごとにその状況などを考慮して算出した評価額を用います。
土地の評価額=土地の面積(地積)×路線価
この評価額に各種特例措置を適用して課税標準額が決定されます。
建物の場合には、「評価額=再建築価格×経年減点補正率」という計算式で算出します。
再建築価格とは、その建物と全く同じものを再度建てた時にかかる建築費のことをいい、経年減点補正率とは築年数が経過するごとに下がっていく建物の価値の減少率のことです。
この評価額に各種特例措置を適用したものが建物の課税標準額になります。
税率
税率については、標準税率は1.4%になりますが、自治体によって超過税率として1.4%を超える税率にすることができます。
一戸建ての固定資産税はいくらくらい?
納税通知書に記載された納税額が適正なものなのかどうかを知る上で、固定資産税の平均的な金額を知っておきたいものです。
一戸建ての固定資産税の目安はいくらくらいなのでしょうか?
平均的な金額は10~12万円程度
固定資産税は、建物の床面積や構造、設備、地域による格差などがありますが、新築一戸建て住宅の場合には土地が狭い場合でも10~20万円程度が目安といわれています。
また建物が古い場合には、たとえ土地が広くても固定資産税は安くなります。
したがって一般的な戸建て住宅の固定資産税の平均的な金額は、10~12万円程度といえるでしょう。
役所で計算した納税額は稀に間違っていることもある様なので、明らかに平均的な金額と比較して高すぎると感じた場合には、自分で計算して確かめてみると良いでしょう。
一戸建てとマンションの違い
固定資産税評価額を決める要因は、立地や建物の規模、構造など様々なので、一戸建てとマンションの固定資産税の違いを単純に比較することはできません。
しかし、土地が区分所有となるマンションでは一戸建て住宅よりも土地の負担が少なくなるので、固定資産税の平均は一戸建て住宅よりもマンションの方が安くなる傾向があります。
一方同じ購入価格で、土地の評価額に大きな差がない物件の場合には、マンションの方が木造の一戸建てよりも固定資産税が高くなるケースがあります。
固定資産税は一般的に土地よりも建物の方に多くかかるため、購入価格のうち建物価格の占める比率が高いマンションの方が、木造一戸建て住宅よりも固定資産税が高くなってしまうのです。
また課税対象のうち建物部分の割合が高いということは、年数が経過すると経年劣化による評価額の減少が発生するので、マンションの固定資産税は築年数と共に安くなりやすいという特徴があります。
建築材料によっても税額は変わる
一般的に、コストが高い家ほど固定資産税評価額が高くなる傾向があります。
同じ床面積でも、木造住宅よりも建築コストが高い鉄筋コンクリート造(RC造)の家の方が、評価額が高くなります。
これには耐用年数も関係していて、木造の約22年に対して鉄筋コンクリート造は約47年なので、長持ちする分資産価値が高いといえるためです。
また同じ面積、同じ構造であっても、タイルや石などの高価な建築資材が使われていたり、ハイグレードなシステムキッチンやシステムバスなどが採用されていたりする場合には、固定資産税評価額に影響します。
したがって建物に資産価値が高いと見なされるものが多く使われているほど、評価額が上がりやすくなります。
家を建てる際にはどういったものを使用したら資産価値が高いものとして評価されるのかを、住宅会社の担当者などにあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
固定資産税を安くする3つの方法とは?
固定資産税は毎年課税される税金なので、できる限り安く抑えたいものです。
そこでこの章では、固定資産税を安くする3つの方法をご紹介します。
家屋調査にはできるだけ立ち会う
固定資産税を算出する元になる評価額を決定するために、新築・増改築を行った住宅に入居してから1~3か月後に地域を管轄する自治体から家屋調査の連絡を受けることがあります。
評価額は、家屋調査や自治体による評価に基づいて決定しますが、今後不動産を所有し続ける限り毎年支払い義務が生じる固定資産税の基準になる重要なものです。
家屋調査を行わない場合には不動産に関する書類のみで審査されてしまうので、実際に調査を行って決定する評価額よりも高く設定されてしまう恐れがあります。
したがって、家屋調査にはできるだけ協力して立ち会う様にすることが大切です。
家屋調査に立ち合い、調査の内容を把握することで厳正な評価額を得ることができると考えましょう。
また評価額を少しでも安く抑えるためには、調査段階での調査員とのやり取りが重要になります。
気になる点や疑問点、意見などがあれば、調査員にしっかりと伝えておくと良いでしょう。
減税措置を上手に活用する
住宅や土地には、前述したような減税措置を利用できるケースがあります。
また既存住宅では、一定の要件を満たす省エネ改修工事を行った際に、当該家屋に係わる翌年分の固定資産税額(120㎡相当分までに限る)が1/3に減額される省エネ改修促進税制や耐震改修促進税制、バリアフリー改修促進税制などの減税措置があるので、これらを利用する方法もあります。
しかしこの様な減税措置には事前に申請が必要になるものがあるので、どの様な減税措置が適用になるのかを事前に確認し、上手に活用する様にしましょう。
税額に納得できない場合は相談窓口へ
地域の課税相場は課税台帳で確認することができますが、自身の税額が同じ地域の課税相場と比較して高すぎるなど、課税額に納得できない場合には、固定資産評価審査申出制度により固定資産評価審査委員会に再審査の申し出を行うことが可能です。
通常では納税通知書の交付後3か月以内に申し出を行うことができるので、役所の相談窓口や税理士に相談してみると良いでしょう。
【Q&A】固定資産税と併せて課税される「都市計画税」とは?
Q:毎年固定資産税と併せて課税される「都市計画税」とはどの様な税金ですか?
A:都市計画税とは都市整備や公共事業のための費用として徴収される地方税で、地域によっては固定資産税だけでなく都市計画税も納めなければなりません。
都市計画税が課せられるのは、市街化区域内に所在する土地と建物の所有者です。
市街化区域とは、都市計画区域における区分のひとつで、積極的に公共施設を整備し、市街化を図っていく区域になります。
都市計画税は、こうした区域において市区町村が行う都市計画事業や土地区画整理事業などに要する費用に充てられます。
尚、都市計画税も土地や建物に対して課税され、固定資産税と一緒に支払います。
税率は地域によって異なりますが、
税額=不動産の評価額(課税標準額)×最高0.3%(制限税率)になります。
最大税率は0.3%なので、固定資産税の税率1.4%と併せると、最大で評価額の1.7%が課税されることになります。
まとめ
固定資産税の計算には様々な条件や要件が絡み、減税措置などがあるので、時々間違いや申請漏れなどがあります。
毎年支払うものなので、損してしまわない様に固定資産税に関する基本的な知識を身に付けておくことが大切です。
本記事を参考に、納税通知書に記載されている金額が間違いないものなのかどうかや、減税措置の申請漏れなどがないかどうかを一度確認しておくと良いでしょう。

コメントを残す